その恋、連載にしてやるよ〜人気作家に溺れていくなんて、聞いてません〜
「うん。岸本、今担当してるよな。悪い男シリーズ、俺、好きなんだけどな。設定もキャラも光ってる。だけど、あれじゃあさすがに厳しい。」

「……一年に一作ですからね」

「そう。今の時代、それじゃ読者がついてこないんだよな。SNSに出れば拡散される、でも更新が止まればすぐに忘れられる。もったいないよ、彼女。」

「はい……」

返事はしたけれど、胸が痛かった。

綾香先生は、流行りに乗るのが苦手な人だ。

彼女にとって小説を書くというのは、物語の“感情”を丁寧に積み上げていくこと。

一行の中にどれだけの想いを込めるか。

それが彼女の持ち味であり、強さだと思っている。

だけどそれは、このスピードが命の時代では“遅さ”としか見なされない。

私は彼女を守りたい。でも、会社の数字の前では、その想いはどこまで通じるのだろう。

「……岸本。」
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