相棒をS級勇者に奪われた俺、スキル【力の前貸し】で勇者を破滅へ導く!~全てを負債地獄に叩き落とし、新たな魔王として君臨する!
第1話 不吉な予感
「…ゴミが」
王の冷たい視線が俺を射抜く。
「永久にレベルが1。強くなる見込みもない。こんな間抜け、誰が勇者と認める!?」
王が青筋を立てて、言い放つ。
「リザヤ!今日を以って、貴様の勇者の称号をはく奪する!」
「フン、とうとうこの日が来たな」
俺の没落に、S級勇者が愉快そうに笑う。
「あっ、俺たちのパーティからも追放な。この雑魚が!」
S級勇者に蹴り飛ばされ、嘲笑が響く。
................。
それから一年が経った。
現在、俺は修道院にいる。
居場所の無かった俺を、ここで受け入れてくれる人が現れた為だ。
おかげで、心に傷を抱えながらも何とか生きてこれた。
...今日もいつもの挨拶をするために、礼拝堂の扉を開ける。
すると、そこには祈りを捧げるレミーシャさんの姿が。
「おはようございます」
「…リザヤ君!」
彼女が駆け寄ってくる。
そして、俺を抱きしめた。
「また、こんなに怪我したのね....」
「……ごめんなさい、心配かけて」
「......いいの。祈りは届いて、あなたは無事だったのだから」
その言葉に、少しだけ心が軽くなる。
「.............」
彼女はまだ俺を離さない。
むしろ、抱きしめる力が強まった。
....体が徐々に温まってくる。
理由は分からないが、彼女に抱擁されるといつも心と体が少し温かくなるような気がした。
「ねぇ、リザヤ君……お願いがあるの」
絞り出すような声。
ためらいの末に出た言葉だと分かる。
「ギルドを辞めて、修道院で働いてほしいわ」
「……お気遣いありがとうございます。けど、断らせてください」
彼女の腕をそっとほどき、頭を下げる。
「俺には、達成したい目標があるので」
それは――
スキル《力の前貸し》の覚醒。
「待って! あなたに償いたいの!」
「……償い、ですか?」
心当たりはない。
行き場のなかった俺に、寝床をくれた人だ。
感謝こそすれ、恨む理由などない。
「私が……勇者に指名なんかしなければ、あなたは追放されずに済んだのに……!」
「神託で決まったことですよね。......あなたのせいじゃありませんって」
「神は選択を誤ったりしないわ。.....きっと、私の思慮が足りなかったせいよ」
彼女は、どこかで責任を感じているのだろう。
だから、はっきりと伝える。
「俺の人生は、自分で決めます」
そう言い残し、礼拝堂を後にした。
去り際、「あなたを尋ねてくる人に気を付けて」と言われたが――
人違いだろう。
そのまま自室へ向かった。
「…相棒はまだ寝ているみたいだな」
静かにベッドへ腰を下ろす。
「“スキル”オープン」
――――――――――――――――――――
リザヤ
Eランク
Lv1(永久)
スキル 力の前貸し
第一覚醒条件:討伐100体
現状:討伐99体
――――――――――――――――――――
「あと一体倒せば、覚醒」
もうすぐ手に入るスキル。
それに俺は人生をかけている。
もし強力なモノならば、高難易度のクエストだってこなせる。
稼げて、いい暮らしもできそうだ。
.....相棒も喜んでくれるはず。
「…クォウ」
相棒が目を覚ました。
「おう、起きたか、フォン」
相棒の毛並みを撫でる。
名前はフォン。
フェンリルに似た四足歩行のモンスター。
フォンは、無力だった自分に寄り添ってくれた。
それが今の絆を生む。
「フォン…ありがとな」
相棒は何も言わず、静かに寄り添う。
それだけで十分だった。
……国から追放されて、どん底だった日々。
でも、フォンと出会って生きるだけの毎日から抜け出せた。
そして、叶えたい夢ができる。
――絶対に相棒を幸せにすることだ。
「まずは、第一歩として…スキルを覚醒させないとな」
俺たちは魔物を討伐するため、森へ向かった。
▽
「ファイヤーボール!」
落とし穴で足掻くゴブリンに炎を浴びせ、息絶えた。
「ふぅ~、やっと100体討伐できた」
「クォウ」
フォンも俺の横で息をつく。
「さてと…スキルオープン」
すぐにスキルを確認する。
「あれ?」
目の前のスキル表示をじっと見つめた。
討伐数は満たしたのに、未覚醒。
何かが足りない。
眉をひそめて、再度スキルの内容をチェック。
すると突如、画面に文字が浮かび上がる。
討伐数:100
その文字の下に異様な文字が加わる。
”最終条件”…憎しみ
『これは一体…何なんだ?』
俺にこの感情を持てってことか?
誰かを憎むことでしか、覚醒出来ないのか?
何か不吉なものを感じた。
「クォウ!クォウ!!!」
フォンが急に駆け寄る。
「フォン…!?…どうした?」
フォンが耳をピクピクさせ、鼻をひくつかせる。
「……?」
俺も周囲を見渡すが、特に変わった様子はない。
けれど、フォンは不安げに足元に擦り寄ってきた。
「なんか、嫌な予感がする……」
そう言いたげな目で、俺を見上げている。
(もしかして、この茂みの先か?)
慎重に進んでみると…
「…!? あれは、S級勇者のシタール…?」
あの日、一緒に勇者に選ばれた男。
だが、俺とは違いS級。
魔力量も天と地ほど差がある。
…どうしてこいつが、この森に?
「おい!いるんだろ!? 国から追放されたリザヤさんよぉ!! シタール様がお呼びだ! 隠れても無駄だからな!」
「早く出てこい! ザコのくせに時間を稼ぐな!」
物陰に隠れながら、じっと様子をうかがう。
(…フォン、このままじゃ埒が明かない。俺が出る。お前はここから動くなよ)
「クォウ…!」
フォンが不満げに鼻を鳴らすが、俺は静かに物陰から抜け出し、前に立つ。
「俺に何の用だ?」
シタールは、ふんぞり返りながらワインを飲んでいる。
「やっと出てきたか。ったく、どれだけビビってたんだ?」
「挑発に乗る気はない。さっさと要件を言え」
「国王の命令で、お前を始末する」
「追放で済んだはずだ」
「フン。生きてると『前勇者』の無様な姿が国の恥になるってさ」
....ふざけるな。
こっちだって懸命に生きている。
それが無様とは、何様だ。
「俺も、お前が生きてると不愉快だ。『勇者』の肩書が同じせいで、自分まで雑魚と同列に見られる」
軽く笑いながら、俺を見下ろした。
「名誉が汚れないよう、たとえ塵でも排除しないとな」
言いながら、胸元の宝石を指で弾く。
勇者と証明するための紋章だ。
「見ろよ、この輝き。塵一つないとこんなに綺麗なんだぜ」
...まるで虫けらでも見るかのよう。
「だから消えろ。塵は塵らしく」
シタールは剣を握る。
「…は?」
反応したのは、俺じゃない。
シタールの部下たちが、慌てて声を上げた。
「シタール様? この雑魚に剣を抜くんですか?」
「そうですよ! 時間の無駄です!」
「そうか? まあ、確かにな…」
ワインをあおると、面倒くさそうに肩をすくめた。
「じゃあ、お前らがやれ」
部下たちがニヤつく。
「へっ、こんな奴、一刀で十分だぜ!」
ダッダッダッ!
「!?」
この足音は、まさか...
「クォウ!」
フォンは低く唸りながら、こちらに向かってくる。
隠れてろと言ったのに。
「うぉっ!? こいつ相棒の魔獣がいるぞ!」
「ははっ、別に関係ないだろ。どうせすぐ終わるしな」
くそっ!! このまま、やられるわけにはいくかよ!!
部下の剣が冷たい光を放ちながら、容赦なく俺へ振り下ろされようとする。
王の冷たい視線が俺を射抜く。
「永久にレベルが1。強くなる見込みもない。こんな間抜け、誰が勇者と認める!?」
王が青筋を立てて、言い放つ。
「リザヤ!今日を以って、貴様の勇者の称号をはく奪する!」
「フン、とうとうこの日が来たな」
俺の没落に、S級勇者が愉快そうに笑う。
「あっ、俺たちのパーティからも追放な。この雑魚が!」
S級勇者に蹴り飛ばされ、嘲笑が響く。
................。
それから一年が経った。
現在、俺は修道院にいる。
居場所の無かった俺を、ここで受け入れてくれる人が現れた為だ。
おかげで、心に傷を抱えながらも何とか生きてこれた。
...今日もいつもの挨拶をするために、礼拝堂の扉を開ける。
すると、そこには祈りを捧げるレミーシャさんの姿が。
「おはようございます」
「…リザヤ君!」
彼女が駆け寄ってくる。
そして、俺を抱きしめた。
「また、こんなに怪我したのね....」
「……ごめんなさい、心配かけて」
「......いいの。祈りは届いて、あなたは無事だったのだから」
その言葉に、少しだけ心が軽くなる。
「.............」
彼女はまだ俺を離さない。
むしろ、抱きしめる力が強まった。
....体が徐々に温まってくる。
理由は分からないが、彼女に抱擁されるといつも心と体が少し温かくなるような気がした。
「ねぇ、リザヤ君……お願いがあるの」
絞り出すような声。
ためらいの末に出た言葉だと分かる。
「ギルドを辞めて、修道院で働いてほしいわ」
「……お気遣いありがとうございます。けど、断らせてください」
彼女の腕をそっとほどき、頭を下げる。
「俺には、達成したい目標があるので」
それは――
スキル《力の前貸し》の覚醒。
「待って! あなたに償いたいの!」
「……償い、ですか?」
心当たりはない。
行き場のなかった俺に、寝床をくれた人だ。
感謝こそすれ、恨む理由などない。
「私が……勇者に指名なんかしなければ、あなたは追放されずに済んだのに……!」
「神託で決まったことですよね。......あなたのせいじゃありませんって」
「神は選択を誤ったりしないわ。.....きっと、私の思慮が足りなかったせいよ」
彼女は、どこかで責任を感じているのだろう。
だから、はっきりと伝える。
「俺の人生は、自分で決めます」
そう言い残し、礼拝堂を後にした。
去り際、「あなたを尋ねてくる人に気を付けて」と言われたが――
人違いだろう。
そのまま自室へ向かった。
「…相棒はまだ寝ているみたいだな」
静かにベッドへ腰を下ろす。
「“スキル”オープン」
――――――――――――――――――――
リザヤ
Eランク
Lv1(永久)
スキル 力の前貸し
第一覚醒条件:討伐100体
現状:討伐99体
――――――――――――――――――――
「あと一体倒せば、覚醒」
もうすぐ手に入るスキル。
それに俺は人生をかけている。
もし強力なモノならば、高難易度のクエストだってこなせる。
稼げて、いい暮らしもできそうだ。
.....相棒も喜んでくれるはず。
「…クォウ」
相棒が目を覚ました。
「おう、起きたか、フォン」
相棒の毛並みを撫でる。
名前はフォン。
フェンリルに似た四足歩行のモンスター。
フォンは、無力だった自分に寄り添ってくれた。
それが今の絆を生む。
「フォン…ありがとな」
相棒は何も言わず、静かに寄り添う。
それだけで十分だった。
……国から追放されて、どん底だった日々。
でも、フォンと出会って生きるだけの毎日から抜け出せた。
そして、叶えたい夢ができる。
――絶対に相棒を幸せにすることだ。
「まずは、第一歩として…スキルを覚醒させないとな」
俺たちは魔物を討伐するため、森へ向かった。
▽
「ファイヤーボール!」
落とし穴で足掻くゴブリンに炎を浴びせ、息絶えた。
「ふぅ~、やっと100体討伐できた」
「クォウ」
フォンも俺の横で息をつく。
「さてと…スキルオープン」
すぐにスキルを確認する。
「あれ?」
目の前のスキル表示をじっと見つめた。
討伐数は満たしたのに、未覚醒。
何かが足りない。
眉をひそめて、再度スキルの内容をチェック。
すると突如、画面に文字が浮かび上がる。
討伐数:100
その文字の下に異様な文字が加わる。
”最終条件”…憎しみ
『これは一体…何なんだ?』
俺にこの感情を持てってことか?
誰かを憎むことでしか、覚醒出来ないのか?
何か不吉なものを感じた。
「クォウ!クォウ!!!」
フォンが急に駆け寄る。
「フォン…!?…どうした?」
フォンが耳をピクピクさせ、鼻をひくつかせる。
「……?」
俺も周囲を見渡すが、特に変わった様子はない。
けれど、フォンは不安げに足元に擦り寄ってきた。
「なんか、嫌な予感がする……」
そう言いたげな目で、俺を見上げている。
(もしかして、この茂みの先か?)
慎重に進んでみると…
「…!? あれは、S級勇者のシタール…?」
あの日、一緒に勇者に選ばれた男。
だが、俺とは違いS級。
魔力量も天と地ほど差がある。
…どうしてこいつが、この森に?
「おい!いるんだろ!? 国から追放されたリザヤさんよぉ!! シタール様がお呼びだ! 隠れても無駄だからな!」
「早く出てこい! ザコのくせに時間を稼ぐな!」
物陰に隠れながら、じっと様子をうかがう。
(…フォン、このままじゃ埒が明かない。俺が出る。お前はここから動くなよ)
「クォウ…!」
フォンが不満げに鼻を鳴らすが、俺は静かに物陰から抜け出し、前に立つ。
「俺に何の用だ?」
シタールは、ふんぞり返りながらワインを飲んでいる。
「やっと出てきたか。ったく、どれだけビビってたんだ?」
「挑発に乗る気はない。さっさと要件を言え」
「国王の命令で、お前を始末する」
「追放で済んだはずだ」
「フン。生きてると『前勇者』の無様な姿が国の恥になるってさ」
....ふざけるな。
こっちだって懸命に生きている。
それが無様とは、何様だ。
「俺も、お前が生きてると不愉快だ。『勇者』の肩書が同じせいで、自分まで雑魚と同列に見られる」
軽く笑いながら、俺を見下ろした。
「名誉が汚れないよう、たとえ塵でも排除しないとな」
言いながら、胸元の宝石を指で弾く。
勇者と証明するための紋章だ。
「見ろよ、この輝き。塵一つないとこんなに綺麗なんだぜ」
...まるで虫けらでも見るかのよう。
「だから消えろ。塵は塵らしく」
シタールは剣を握る。
「…は?」
反応したのは、俺じゃない。
シタールの部下たちが、慌てて声を上げた。
「シタール様? この雑魚に剣を抜くんですか?」
「そうですよ! 時間の無駄です!」
「そうか? まあ、確かにな…」
ワインをあおると、面倒くさそうに肩をすくめた。
「じゃあ、お前らがやれ」
部下たちがニヤつく。
「へっ、こんな奴、一刀で十分だぜ!」
ダッダッダッ!
「!?」
この足音は、まさか...
「クォウ!」
フォンは低く唸りながら、こちらに向かってくる。
隠れてろと言ったのに。
「うぉっ!? こいつ相棒の魔獣がいるぞ!」
「ははっ、別に関係ないだろ。どうせすぐ終わるしな」
くそっ!! このまま、やられるわけにはいくかよ!!
部下の剣が冷たい光を放ちながら、容赦なく俺へ振り下ろされようとする。
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