Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
「お誕生日おめでとう、想」

ネイビーの箱にゴールドのリボンをかけたプレゼントを、小夜は笑顔で差し出した。

「ありがとう、小夜。開けてみてもいいか?」
「もちろん」

想はわくわくした様子でリボンを解く。

「なんかドキドキするな。なんだろう……。えっ、これって」

入っていたのは、アナログのレコードプレーヤー。
デジタルが主流の今はほとんど注目されることはないが、小夜は想なら喜んでくれるのではないかと思ってこれを選んだ。

「実家に古いレコードがたくさんあってね。子どもの頃、よく聴いてたんだ。CDとは違う音が好きで」

すると想は嬉しそうに頷く。

「ああ、俺もだ。思い出した。家で色んなレコード掘り起こして聴いてたな。音が直に響いてくるのがたまらなく好きで」
「うん、わかる。レコードにしか出せない音だよね」
「すっかり忘れてた。懐かしいな」

想は箱からそっとプレーヤーを取り出した。

「おっ、スタイリッシュでかっこいいな」
「想の部屋にも馴染むかなと思って」
「ありがとう、小夜。すごく嬉しい」
「ふふっ、よかった、気に入ってもらえて。早速聴いてみない?」

え?と想が不思議そうに顔を上げる。

「すぐ聴けるように、レコードも入れておいたんだ」
「どれ? おっ、これか。ビートルズにカーペンターズ。いいな」
「ひとまず王道ね。あとはクラシックも」
「ほんとだ」

そう言ってレコードを数枚手にし、想はそのうちの一枚を小夜に見せた。

「これ、今小夜と一緒に聴きたい」

それはショパンの曲集だった。

「うん、私も想と一緒に聴きたい」

想は頷くと、プレーヤーをコンセントに繋いでレコードをそっとケースから取り出す。

「この感じ、思い出すな」
「ふふっ、フチを持つんだよね」
「ああ。割れないように、そっとな」

プレーヤーの丸いテーブルにレコードを載せてスイッチを入れる。

「マニュアルもできるんだ。けど、久しぶりだからオートにしよう」

ボタンを押すと自動でアームが動き、回り始めたレコード盤に針が下りる。
プツッとかすかな雑音のあと、空気を震わせてアナログの音が響いた。

ショパンの夜想曲。
『ノクターン第二番』

二人で肩を寄せ合い、美しい調べに耳を傾ける。
ノスタルジックな雰囲気と、心に直接響くようなレコードの音。
同じ気持ちを共有しながら、二人で手を握り合った。

「特別な時間をありがとう、小夜」

聴き終えたあと、想は優しく小夜に微笑んでキスをする。

「どういたしまして。これからもっと色んなレコードを集めようね」
「ああ。二人でたくさん聴こう」
「うん」

見つめ合うと、どちらからともなく顔を寄せて口づける。
幸せに胸を震わせながら、二人はひと晩中、言葉もなく愛を伝え合った。
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