Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
日付けが変わらないうちにと、二人で早速ルームサービスのディナーを楽しむ。
バーのマスターが持たせてくれたケーキは、クーベルチュールチョコレートとフランボワーズソースのハート型のケーキだった。
『Happy Valentine's day』と書かれ、細かな金粉で飾ってある。

「わあ、美味しそうだね」
「ああ。今、紅茶淹れる」
「私がやるよ」
「いいから座ってろ。小夜の好みを覚えておきたいんだ。紅茶はミルクで?」
「うん、お砂糖はいらない。想は?」
「俺はストレート。コーヒーもブラック派だ」
「覚えておくね」

小夜がケーキをお皿に切り分け、想の淹れた紅茶と一緒に二人で味わう。

「ビターで美味しい。想は甘いもの好きなの?」
「どちらかというと苦手。けどこれは美味しい。リキュールも入ってるな」
「うん。大人の味わいだね」

ケーキを食べ終えて時計を見ると、間もなく日付けが変わろうとしていた。

「わ、大変! もうこんな時間。ちょっと待ってて」

小夜はバタバタと荷物を置いたクローゼットに行き、大事そうにプレゼントの箱を取り出すと、背中に隠してソファに戻った。

「ん? 小夜。それで隠してるつもりか? なんか見えてるけど」
「もう! 見ないで」
「無理だ。可愛い小夜から一瞬でも目をそらしたくない」

小夜は顔を真っ赤にするが、背中にプレゼントを抱えていて頬を押さえることもできない。
潤んだ瞳でちらりと見上げると、想は少し息を呑んでから、ゆっくり顔を寄せてきた。

唇に優しいキスが落とされる。

プレゼントを落とすまいと両腕を後ろに回したままの小夜に、想は角度を変えて何度もキスを繰り返した。
胸を押し返すことも、止めることもできずに、小夜はひたすら想のキスを受け止める。

「……んっ」

甘い吐息がもれ、思わず力が抜けそうになり、懸命にプレゼントを後ろ手に握りしめていた。

「想……、もう、だめ」

なんとか声に出すと、想は少し身体を離した。
はあ、と小夜は息を整える。

「小夜……、色っぽいな。ゾクッとする」

そう言って想はまた口づけ、そのまま小夜をソファに押し倒そうとする。

「んっ、だめだったら。プレゼントが潰れちゃう」
「ああ、そうか。俺にとっては小夜がなによりのプレゼントだけど、俺の為になにを選んでくれたのかも気になる」

やっと想が身体を起こし、小夜はプレゼントを前に回して両手で持つ。
時計を見ると、零時を回ったところだった。
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