Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
「秋のミニコンサート、今年は小夜と光くんでやってみない?」

ある日の朝会で、店長がそう切り出した。
毎年芸術の秋にちなんで、11月の週末に店内でちょっとしたイベントを行っている。
楽器フェアとして期間中は楽器を割引価格で販売したり、楽器の体験や相談会、そして店内では一日中ミニコンサートを開催するのだ。

今年もプロの音楽家を招いて、ピアノソロの他にもフルート、ヴァイオリン、弦楽四重奏など、様々なスタイルのコンサートが予定されていた。
そこに自分たちもやるとはどういうことなのだろうと、小夜は光と顔を見合わせる。

「私と光くんで、ですか?」
「そう。小夜はクラシックで光くんはジャズだけど、そういうジャンルにこだわらないで、なにか面白いこと企画できない?」
「面白いこと? って、どういう感じの?」
「それを二人で考えてみて」

ええー?と小夜は眉根を寄せる。
どういうことなのか、まったく想像がつかなかった。

「まあ、深く考えなくていいからさ。好きな曲を弾いてくれればいいの。せっかくだから絡んだら面白そうかなって思っただけよ」

ちょっと考えてみて、と言われて小夜は頷いた。
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