Blue Moon〜小さな夜の奇跡〜
「小夜ー、小夜?」
呼ばれて小夜はハッとする。
「なに? 光くん」
「なにじゃないよ。今日何回目だ? ぼーっとしてるの」
「あ、ごめん」
ホテルで本田と別れてから一度帰宅した小夜は、着替えて朝食を食べながら、何気なくテレビを見ていた。
芸能情報のコーナーで、夕べのホテルでのクリスマスツリー点灯イベントの様子が紹介され、想が詰めかけた観客を前に『Snowy Crystal』を弾き語りしていた。
想の歌声は低く艶やかで、静かに胸に迫るメロディに小夜は息をするのも忘れて感動した。
(想って、やっぱりすごい)
最前列で熱心に聴き入っている女性たちが、感激の面持ちで想を見つめている様子も映し出される。
(きっとこの人達はずっと昔からの想のファン。曲をすべて知っていて、私なんかよりもはるかに想に詳しいんだろうな)
そう考えると、ますます身が縮こまる思いがした。
(彼女たちが、想に恋人ができたと知ったら? しかもそれが、芸能人ではなく普通の一般人で、美人でもなければ熱心なファンでもない。絶対にいい気はしないよね)
思わずため息をつき、視線を落とす。
テレビはいつの間にか次の話題に移っており、小夜はリモコンで消してから立ち上がった。
そのまま出勤して開店の準備をしていたが、どうしても頭の中ではそのことばかり考えてしまう。
光に呼ばれても、すぐには返事ができなかった。
「大丈夫かよ。なにか心配事でもあるのか?」
「ううん、ないよ。えっと、お正月飾りのことだよね? 去年のディスプレイの写真があるから、それを参考にしながら飾っていこう」
バックオフィスから正月用の飾りを持って来て、店内を飾っていく。
クリスマスの雰囲気から一転して、今度は和のテイストだった。
「年末年始、小夜は予定あるのか?」
飾りつけながら光が聞いてくる。
「ううん、特には。実家に帰ってゴロゴロ寝正月かな」
「もったいないな。街でカウントダウンとかは?」
「しないしない。寒いもん」
「年寄りか!」
そう言ってから、光はふと真剣な表情をした。
「小夜。休みの間、一日だけでも俺と会ってくれないか?」
「え? どうして?」
「小夜と話がしたい。ここ二、三日、小夜の様子がなんか気になってさ」
ああ、と小夜は視線を落とす。
「光くん、私ね。もう会えないと思ってた人と再会したの」
「えっ! それって、小夜の忘れられない人?」
こくりと小夜は頷いた。
「ちょ、待てよ。まさかそいつとつき合うことにしたのか?」
「うん、そう」
光は怒ったように早口でまくし立てる。
「なんだよそれ、意味わからん。小夜、もう二度と会えないし、会ったらだめな相手だって言ってたよな? それがどうやったらそいつとまた会って、つき合うことになったんだよ。忘れられない男を想って辛そうな小夜を、俺はいつだってそばで見守ってきた。それなのにそいつは、散々小夜を悲しませておいて、あっさりかっさらっていくのかよ? 俺は……、俺の気持ちはどうなるんだよ!?」
「光くん……。ごめんなさい、ずっと私のことを気にかけてくれてたのに。だけど私、どうしても」
その時店長の「朝会始めるわよー」という声が聞こえてきた。
「もういい、聞きたくない」
光はそう言って小夜に背を向け、スタスタとカウンターへ歩いていった。
呼ばれて小夜はハッとする。
「なに? 光くん」
「なにじゃないよ。今日何回目だ? ぼーっとしてるの」
「あ、ごめん」
ホテルで本田と別れてから一度帰宅した小夜は、着替えて朝食を食べながら、何気なくテレビを見ていた。
芸能情報のコーナーで、夕べのホテルでのクリスマスツリー点灯イベントの様子が紹介され、想が詰めかけた観客を前に『Snowy Crystal』を弾き語りしていた。
想の歌声は低く艶やかで、静かに胸に迫るメロディに小夜は息をするのも忘れて感動した。
(想って、やっぱりすごい)
最前列で熱心に聴き入っている女性たちが、感激の面持ちで想を見つめている様子も映し出される。
(きっとこの人達はずっと昔からの想のファン。曲をすべて知っていて、私なんかよりもはるかに想に詳しいんだろうな)
そう考えると、ますます身が縮こまる思いがした。
(彼女たちが、想に恋人ができたと知ったら? しかもそれが、芸能人ではなく普通の一般人で、美人でもなければ熱心なファンでもない。絶対にいい気はしないよね)
思わずため息をつき、視線を落とす。
テレビはいつの間にか次の話題に移っており、小夜はリモコンで消してから立ち上がった。
そのまま出勤して開店の準備をしていたが、どうしても頭の中ではそのことばかり考えてしまう。
光に呼ばれても、すぐには返事ができなかった。
「大丈夫かよ。なにか心配事でもあるのか?」
「ううん、ないよ。えっと、お正月飾りのことだよね? 去年のディスプレイの写真があるから、それを参考にしながら飾っていこう」
バックオフィスから正月用の飾りを持って来て、店内を飾っていく。
クリスマスの雰囲気から一転して、今度は和のテイストだった。
「年末年始、小夜は予定あるのか?」
飾りつけながら光が聞いてくる。
「ううん、特には。実家に帰ってゴロゴロ寝正月かな」
「もったいないな。街でカウントダウンとかは?」
「しないしない。寒いもん」
「年寄りか!」
そう言ってから、光はふと真剣な表情をした。
「小夜。休みの間、一日だけでも俺と会ってくれないか?」
「え? どうして?」
「小夜と話がしたい。ここ二、三日、小夜の様子がなんか気になってさ」
ああ、と小夜は視線を落とす。
「光くん、私ね。もう会えないと思ってた人と再会したの」
「えっ! それって、小夜の忘れられない人?」
こくりと小夜は頷いた。
「ちょ、待てよ。まさかそいつとつき合うことにしたのか?」
「うん、そう」
光は怒ったように早口でまくし立てる。
「なんだよそれ、意味わからん。小夜、もう二度と会えないし、会ったらだめな相手だって言ってたよな? それがどうやったらそいつとまた会って、つき合うことになったんだよ。忘れられない男を想って辛そうな小夜を、俺はいつだってそばで見守ってきた。それなのにそいつは、散々小夜を悲しませておいて、あっさりかっさらっていくのかよ? 俺は……、俺の気持ちはどうなるんだよ!?」
「光くん……。ごめんなさい、ずっと私のことを気にかけてくれてたのに。だけど私、どうしても」
その時店長の「朝会始めるわよー」という声が聞こえてきた。
「もういい、聞きたくない」
光はそう言って小夜に背を向け、スタスタとカウンターへ歩いていった。