君と進む季節

9.抜け出した夜

大学の忘年会が始まった。
居酒屋の中はすでに笑い声やグラスを合わせる音で賑やかだった。

俺は友達と乾杯して、テンション上がってたけど、やっぱり気になるのは君のこと。

君は普段の元気な笑顔より少しだけ疲れてて、席の隅っこに座ってる。
こないだまでめっちゃ忙しかったもんな。

何度か目が合うけど、なかなか話せるタイミングがなくて、もどかしい。

忘年会のざわめきと笑い声が響く中、みんなは二次会の話で盛り上がっていた。
けど、俺は疲れた顔してる君がずっと気になっていて、
「ちょっと二次会抜けて、外でゆっくりせえへん?」って耳元でつぶやいた。

君は驚いたように見えたけど、すぐに頷いてくれた。
そうして俺たちは賑やかな忘年会の席を離れて、静かな夜の街へ出た。

二人でコンビニへ向かう途中、夜風がひんやりしていた。

「なんか欲しいもんある?」
「うーん…別にないけど」

君は俺の後ろをついてくる。
何買ったかなんて覚えてない。
外に出たら、君が寒そうに腕を組んでる。

「寒ないん?」
と俺が聞くと、君は
「ちょっと寒いかも」って笑った。

「温めたろか」
俺はふざけてコートの前をパッと開いて、勢いよく彼女を包み込んだ。

押し返されるかと思ったのに、君は何も言わずにそのまま抱きしめられてた。
俺の方が肩の力抜けなくて、なんか変に呼吸が浅くなる。

結局、気恥ずかしくなって、
「寒いんやったら、俺の着とき」

ってコートを脱いで渡したら、君はくすっと笑った。
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