砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
でも私は、ただじっと、王の背中を見つめていた。

あの方がどんな答えを口にするのか――

それを、誰よりも知りたいのは、私だった。

「……許せ。愛を、新たに抱けなくなったからだ。」

カリーム王のその言葉に、場の空気が凍りついた。

妃たちの美しい顔が、一斉に苦悩に染まっていく。

「私たちの愛を……疑っているのですか⁉」

誰かが叫んだ。

王はかぶりを振る。

「いや、違う……ただ……」

その瞳には、どうしようもない寂しさがあった。

「今は、黙って見過ごしてくれ。」

王の声は低く、けれど確かに願っていた。

でも――ハーレムでそんな言葉が許されるはずもなかった。

「どういうこと⁉ 私は、王陛下を愛しているのに!」

「私だって! 毎夜、王の夢を見ているのよ!」

妃たちの声が重なり、部屋の中が怒りと哀しみに満たされていく。

私は――ただ黙って見ていた。
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