砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
「……カリーム」

ユリーナ様が吐息交じりにそう名を呼ぶと、王は微笑んで彼女の肌に口づけを落とした。

私は動けなかった。

身体が硬直し、足が床に縫いとめられたようだった。

それが「いけないもの」だとは理解していたのに、目が離せなかった。

王の手が、ユリーナ様の胸元へ滑っていく。

指先がふわりと触れるたび、ユリーナ様の唇からこぼれる声が、私の心を震わせた。

――ああ。

今でも、時折夢に見る。

ユリーナ様のあの艶やかな吐息。

そして何より、ユリーナ様を愛でる王の優しい瞳。

私にとってカリーム王は、最初から“この世のものではない存在”だった。

けれどそれから幾夜も、王の背を遠くから見つめるうちに、私は気づいてしまった。

あれは憧れではない。

あれは――恋だったのだ、と。
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