砂漠の王に捧げる夜 ―ただひとときでも、あなたの愛を―
王が、それほどまでに彼女を慈しんでいた証。

拭きながら、私はそっと指を這わせる。

目を閉じれば、ユリーナ様の微笑みが浮かんでくる。

そして、その隣に――

あの夜、髪を垂らし、唇を落としていた王の姿。

「……あの方に愛されるというのは、どれほど幸せだったのでしょうか」

言葉にしてしまえば、心のどこかが軋んだ。

分かっている。

私は、あの方にはなれない。

この指も、この肌も、この命も。

決して、王の“愛した女”にはなれないのだ。

それでも。

せめて、少しだけでも。

あの人の孤独を癒せるのなら――

私のすべてを捧げても、悔いはない。

そんな風に思ってしまう自分が、怖いほどに愛おしかった。
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