Still In Love
 少し驚いて、私は彼を見つめ返す。
 妙に思われるかもしれないが、さっきまでの苛立ちが消えてゆくのを感じる。
 ずっと昔にも、こんなことを言われたと思い出しながら⋯⋯。


 月明りの下を、手を繋いだままゆっくり歩きながら、あれこれ他愛ないことを話していた。
 歓楽街を抜けると、急にひと気もなくなり、緑が豊かなエリアに入る。
 最近では、夏は熱帯夜が当たり前になりつつあるが、今夜はカラッとした涼しい風が心地よい。


 私とスギヤマは、大学生になってまもない頃からの付き合いなので、もう七年の腐れ縁だ。
「初めて会った頃は、まだコンタクト使ってなかったよね」
 十代の頃も、既に近眼は進んでいたが、コンタクトは怖くて、かと言って常にメガネをかけて歩くことにも抵抗があった。
「長い付き合いで、デート中に何度コンタクト落としたことやら」
 スギヤマは、可笑しそうに言う。
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