私のテディベアに、私が溺愛されるまで

13

水族館の中を歩きながらも、一朗はずっと落ち着かなかった。

周囲のざわめきや、楓を二度見する男たちの視線がどうにも気になって、展示がほとんど頭に入ってこない。

(無理だ。今日は……無理だ……)

クラゲの光がきらきら揺れるトンネルを抜けたところで、楓が嬉しそうに言った。

「ねぇ、一朗。夕飯どうする? どっか行く?」

一朗は立ち止まったまま、楓を見つめる。

その瞳も、長い髪も、ボレロの下に隠しきれないスタイルも。

どれも全部、自分だけが知っていてほしいと思ってしまう。

(……俺、こんなに独占欲強かったっけ……)

周りの視線がまた楓に集まるたび、胸の奥がざわざわして仕方ない。

そしてついに、一朗は限界を迎えた。

「……もういい」

「えっ?」

楓がきょとんとする。

一朗は少し息を荒くしたまま、真剣に言った。

「いつも通り、俺が作るから。家で食べよ」

楓の目がぱっと輝き、頬を赤く染めた。

「……いいの?」

「ああ。頼むから、今日はもう……人目につかないところがいい」

楓はふわっと微笑んだ。

「……うん。じゃあ、一朗んちで、ごはん」
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