女王陛下のお婿さま
05蜂蜜酒と砂糖菓子
 一人でも煩わしかったのに、それが二人になってしまった。翌朝から、二人の王子によるアルベルティーナ争奪戦が起こった。

 食事は三食いつも三人一緒に。アルベルティーナが公務の時は、ファビオは主に湯殿で過ごし、ルイはティールームでお茶を飲み。彼女が少しでも時間が空くと、まるで恋人か婚約者のようにぴったりと付きまとう。

 合間にちょこちょこ二人がいがみ合うので、アルベルティーナは三日と経たず、一日でうんざりしてしまった。

 数日経つ頃にはすっかり疲れ果ててしまい、食事を前に思わずため息を零すと、それを目ざとく見つけたルイが席を立った。そしてすぐに戻って来ると、彼女に飲み物の入った瓶を差し出した。

「だいぶお疲れのようですね。よろしかったらこちらをどうぞ……」

 葡萄酒の瓶のように見えるが、それよりは少し小さい。そのコルクを開け、ルイは中の液体をグラスに少し注いだ。

 一体誰のせいで疲れているのか分かっているのか、とちらりと思ったが、アルベルティーナは素直にそれを手にした。瓶から注がれた琥珀色の液体が、光を反射してキラキラと美しかったからだ。

「これは、何ですか?」

「僕の国から持参した、蜂蜜酒です。ヘーメル国の特産品で、疲労回復によく効きます」

 ふわりと香る甘い匂い。一口飲むと、やはり甘いが何処かスッキリした後口。だけど濃厚だ。

 アルベルティーナはお酒はあまり得意ではない。成人してから飲んだのも、付き合いで数回というくらいだ。だけどルイの蜂蜜酒は美味しいと思った。身体の中が温まってほぐれてゆくように感じる。

「美味しい……」

「気に入って頂けて良かったです。よろしければこちら、差し上げますよ。就寝前に飲むと良いそうですから」

 ルイが瓶を差し出すと、それを横からかすめ取る手が。

「――へえ? そんなに旨いなら、俺にも飲ませてくれよ」

 いつの間にかファビオが二人の後ろに立っていた。彼は奪い取った蜂蜜酒をテーブルのグラスになみなみと注ぎ、一気に煽る。
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