女王陛下のお婿さま

 アルベルティーナを、守ってやりたかった。

 女王として毅然と振るまう反面、自分の事には自信が無いような素振りを見せる。自分の恋心には、まるで自信が無いように……

 特定の人物の話をする時にだけ、彼女の瞳は揺れる。それが何なのか、ファビオはとっくに気が付いていた。

(……まったく、不器用だな)

 ファビオは、それが彼女たちの事なのか自分の事なのか分からず、思わず頬を緩めてしまった。

「――何をニヤニヤしてるんだ」

 ファビオに剣を突き付けていた兵士が、彼の表情の変化をめざとく見つけた。

「別に。ニヤついていたつもりは無かったんだがな」

 ファビオはさっと表情を戻しそむけたが、兵士はいぶかしげに顔を覗き込んだ。様子を探るように暫く見ていたが、やがて今度は兵士がニヤリと笑う。

「まあ、いい。軍事大国ナバルレテの王子だと偉ぶっているのも今のうちだ。時期にルイ王子から指示が出る。そうしたら、一番最初に貴様を殺してやるよ」

 どうやら兵士は、ファビオもナバルレテ国も気に入らないようだ。挑発するように剣をちらつかせた。

「そんななまくらな剣で、出来るのか?」

「うるせえ! 今すぐ試してやってもいいんだぜ!」

 今度はファビオの挑発に兵士は憤り、手にしていた剣を振り上げた。振り上げられた剣に怯え、誰かがキャー、と悲鳴を上げる。

 その時――ドオン、という地響きのような大きな音が大広間に響いた。

 音の方向へ目をやると、そこは閉鎖されていた大広間の出入り口。扉が破壊され、ハレルヤ王国の兵士ではない、見慣れない鎧を着た者たちが十数名なだれ込んで来ている。

 叫ぶ人々、戸惑う兵士たち。

 混乱の中、鎧の者たちは素早く剣を抜くと、クリストフやエメリナ、ファビオへ剣を向けていたルイの兵士たちに切りかかる。剣が剣を弾く金属音が数回聞こえたかと思うと、あっという間にルイの兵士たちを倒してしまった。
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