やさしく、恋が戻ってくる
プロローグ
41歳になった朝、私はひとりだった。
娘が家を出て、夫とふたりきりの生活が戻ってきたはずなのに、
ふたりの間には、埋めようのない静けさが横たわっていた。
手を伸ばせば届く距離なのに、触れることも、見つめ合うこともなくなって久しい。
「夫婦だから」「家族だから」と、
何かをあきらめて生きることに慣れてしまっていたのかもしれない。
だけど、
本当は、気づかないふりをしていただけだった。
女として、愛されたい。
もう一度、「あなたの妻」であるだけじゃなく、「あなたの女」として抱きしめられたい。
それは、わがままなんかじゃない。
大人になっても、母になっても、
私はまだ、ひとりの女として生きている。
そして私は、思い出す。
17歳で、彼の手を取った日のこと。
不安も迷いもあったけれど、「好き」という気持ちだけを信じて、まっすぐに踏み出したあのときを。
あのときの私が選んだ手のぬくもりは、今でも、ちゃんとここにあるのだろうか。
これは、
41歳になった私が、再び“こうちゃん”に恋をするまでの、静かで甘やかな物語。
娘が家を出て、夫とふたりきりの生活が戻ってきたはずなのに、
ふたりの間には、埋めようのない静けさが横たわっていた。
手を伸ばせば届く距離なのに、触れることも、見つめ合うこともなくなって久しい。
「夫婦だから」「家族だから」と、
何かをあきらめて生きることに慣れてしまっていたのかもしれない。
だけど、
本当は、気づかないふりをしていただけだった。
女として、愛されたい。
もう一度、「あなたの妻」であるだけじゃなく、「あなたの女」として抱きしめられたい。
それは、わがままなんかじゃない。
大人になっても、母になっても、
私はまだ、ひとりの女として生きている。
そして私は、思い出す。
17歳で、彼の手を取った日のこと。
不安も迷いもあったけれど、「好き」という気持ちだけを信じて、まっすぐに踏み出したあのときを。
あのときの私が選んだ手のぬくもりは、今でも、ちゃんとここにあるのだろうか。
これは、
41歳になった私が、再び“こうちゃん”に恋をするまでの、静かで甘やかな物語。
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