あのね、先生
episode4. 解けない気持ち📖
先生が家族といたところを
目撃してしまってからというもの、
あの光景ばかりが
ぼんやり脳裏に浮かぶ。
今日は授業の日なのに………
こんなに先生に
会いたくないと思うのは初めてだった。
どうしよう……休もうかな。
街で先生のことを
勝手に見つけて、
勝手に気まずくなって、
休もうとしている———
自分、いい歳して何やってんだろう。
ため息をつきながらも、
気づけばスクールは、もう目の前だった。
でも、先生が悪いわけじゃない。
私が勝手にショックを受けているだけ。
——けど。
授業中も、内容はほとんど頭に入ってこなかった。
ノートを開いたまま、ペンを握る手に力が入らない。
どうしても、
あの光景が、気持ちが、
胸に引っかかってしまう。
”先生には、もう家族がいるんですか?”
なんて。
簡単に聞けるわけないよね。
もし聞いて、答えが「YES」だったら?
その先は——?
そんな自問自答を繰り返していたら、
あっという間に授業が終わろうとしていた。
どうしよう、でも……
えぇぇぇえい!聞いてしまえ!!!
授業後。片付けをしている先生に、
”答え合わせ”をするかのように声をかけた。
「先生、この前……」
いざ口を開くと、言葉が詰まる。
先生はそんな私を見て、優しく笑った。
「どうした?」
「あの……週末に先生を街で見かけて……」
先生は、「週末……? 」と
記憶を思い出すように顎に手をやる。
「先生と一緒に歩いてた人たちは、その……」
心臓がバクバクと音を立てる。
同時に、なんで聞いてしまったんだろう……と後悔が押し寄せた。
一瞬、先生は言葉を探すように視線を逸らし、
それから小さく笑った。
「あれは、”妹と姪っ子”だよ」
……え?
「妹と、姪っ子?」
先生は、少し照れくさそうに頷いた。
「そう。俺が子ども好きだって知ってるから、
『1人で暇してるでしょ?』って、たまに妹が姪っ子を連れて遊びに来るんだよね」
そっか。
私の勘違いだったんだ……
その答えを聞いて、
胸の中で何かが軽くなったような気がした。
「そんなに驚いた?」
少し意地悪そうな顔で聞く。
その表情に、胸の奥がドキッと鳴る。
「おっ、驚いてなんかないです……!」
「そう?……じゃあ、また来週」
先生は、笑いながらそう言って
教室を出ていった。
帰り道。
あんなに重く感じていた気まずさは、
いつの間にか消えていた。
ただ——
胸に引っかかっているものは、
まだ完全には消えていない。
先生は結婚していないってことなのかな……?
「一人で暇してる」って——どういう意味?
先生が独身なのか、彼女がいるのか。
新たな問題の”答え”はわからず、
結局モヤモヤする今日この頃であった。
ーーー