響け!猛毒のグラーヴェ
アントーニョの問いに、刑事は「そうだが?」と心底不思議そうな顔を向けた。



屋敷の空気は重い。どの部屋にいても、エミリーの死が纏わりついてくるかのように心が重くなるのを感じる。レオンハルトとアントーニョはゲストルームにて、エミリーのことを話していた。

「桃がグレープフルーツに変わるってあり得ないよな。魔法でも使わないと無理だろ」

「そうだね。ただ、この屋敷にいる魔法使いは私だけだ。それにあの部屋に魔法を使った痕跡はなかった」

「なら、ますますわからねぇよ。グレープフルーツジュースを飲んでエミリー嬢は死んだってのか?毒が入ってない限り、グレープフルーツで人は死なねぇだろ」

「遺体の状態から見て、アレルギーによるアナフィラキシーショックというわけでもなさそうだったからね。そもそもエミリー嬢の抱える持病すら私たちはわからないし、情報が圧倒的に足りない」

桃からグレープフルーツに変わったジュース。毒物は検出されなかった。エミリーが持っていたレモン。謎だらけである。
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