響け!猛毒のグラーヴェ
その時だった。小さな声が部屋に響く。アントーニョのものでもレオンハルトのものでもない高い声だ。

『レオンハルトさん』

リズの声だった。レオンハルトの胸の奥が温かくなる。手鏡を取り出すと、リズが映っていた。

「リズ。なんかあったのか?」

アントーニョの問いにリズは首を横に振った。

『エミリー・ストーンさんの死のことが気になってしまって……。何か進展はありましたか?』

「わからないことだらけなんだ」

レオンハルトはジュースのことやエミリーが握り締めていたレモンについて話す。リズは静かに聞いていた。

「レモンが何を意味するのかわからなくてね」

『……恐らく、スラングかと思われます』

リズの言葉にレオンハルトは目を見開いた。スラングとは、ある特定の人間にだけわかる言葉である。リズはレオンハルトとアントーニョを真っ直ぐ見つめた。

『エミリーさんの出身は私と同じです。なので、私にはレモンが何を意味するのかわかります。レモンの意味はーーー』
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