ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする
3章 ドジョウの舞
繁忙期の夏が終わり、明日からはもう10月。
少しは落ち着くかと思った矢先。なんと私に、バックダンサーお姉さんの代役がまわってきた!

つ、ついにキターーーっ!!

本番は11月初めの土曜の一度きり。臨時代役とはいえ、私には大きなチャンスだった。
仕事を終えた後は部屋で自主練。特別手当までつくから本気にならざるを得ない。

『お客様の笑顔が見られる!』そう思うだけで胸が高鳴る。先輩たちからも『頑張ってね!』と励まされ、私はやる気満々だった。
……ただ一人、不安そうに見てくる鬼島チーフを除いては。

大丈夫ですって、チーフ。カメ子、ここで名誉挽回してみせます!



ウィルとラーラの後ろで踊るダンサーたちは、私以外は大学生バイト。経験豊富で頼もしい。私は覚えが悪いから、週末ごとに差し入れを持って控室を訪ね、マンツーマンで振り付けを叩き込んでもらった。みんな面倒見がよく、まるで妹扱い。気づけばママのような安心感さえあった。

衣装は叔母・花村圭衣(はなむらけい)ちゃまのデザイン。白襟にふんわり袖、胸元とウエストにはリボン。高めのツインテールに花飾りをつける。ロリータファッションの世界そのものだ。

叔母はCool Beautyの社長兼デザイナーで、旦那様の大和(やまと)おじちゃまと共に筋金入りのピーターズファン。私にとっても大先輩だ。ちなみに大和おじちゃまは、パパの幼馴染で“慶智の王子たち”の一人でもある。

普段は実家と距離を置いている私だけど、このことだけはどうしても圭衣ちゃまに伝えたくて連絡した。もちろん、実家には内緒で。





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