ドジっ子令嬢は着ぐるみうさぎに恋をする
4章 ハッピーホラーデイ!
冬の繁忙期、12月中旬。マジアク課では深刻な問題が発生していた。
世間を騒がせているインフルエンザが、ついにパレスピーターズにも上陸。鬼島チーフ以外の男性先輩たちが次々とダウンし、さらにウィルの着ぐるみ担当まで戦線離脱。
入社時のオリエンテーションで言われた言葉が頭をよぎる。
『冬場は風邪やインフルエンザの予防を徹底すること』
小さな子どもたちが集まる保育園や学校、そしてここパレスピーターズは、感染リスクが高い場所だ。
そんな中、私はというと、相変わらずピンピンしている。ああ、やっぱりあのことわざは本当だ――ドジっ子と鬼は風邪を引かない。
人手不足で赤坂マリンホテルグループからも応援が入ったが、マジアク課は子ども専門。外部の応援を簡単に入れられない。頼れるのは、親部署の企画部だけだ。
幸いショーは平日なし。それでもKAR(キッズアクティビティルーム)は常に開放されていて、子どもたちが絵を描いたり本を読んだりできる。事故防止のため、私や企画部の女性社員がバックダンサー衣装で“キッズウォッチャー”を担当する。
その合間には、ウィルやラーラが巡回したり、午後4時からのミート&グリートで記念撮影をしたり。平日は企画部やマジアク課の若手男性が着ぐるみ担当を回していた。
なんとか回せそう。そう、思っていた。
まさかこの数日後、パレス内で『あの事件』として語り継がれる、超ド級の幕開けだったなんて……。
そしてその現場に、あの鬼島チーフもいて。
今でも思い出すだけで心臓が跳ねる。怖さと一緒に、あの低い声が耳の奥に残っているから。
世間を騒がせているインフルエンザが、ついにパレスピーターズにも上陸。鬼島チーフ以外の男性先輩たちが次々とダウンし、さらにウィルの着ぐるみ担当まで戦線離脱。
入社時のオリエンテーションで言われた言葉が頭をよぎる。
『冬場は風邪やインフルエンザの予防を徹底すること』
小さな子どもたちが集まる保育園や学校、そしてここパレスピーターズは、感染リスクが高い場所だ。
そんな中、私はというと、相変わらずピンピンしている。ああ、やっぱりあのことわざは本当だ――ドジっ子と鬼は風邪を引かない。
人手不足で赤坂マリンホテルグループからも応援が入ったが、マジアク課は子ども専門。外部の応援を簡単に入れられない。頼れるのは、親部署の企画部だけだ。
幸いショーは平日なし。それでもKAR(キッズアクティビティルーム)は常に開放されていて、子どもたちが絵を描いたり本を読んだりできる。事故防止のため、私や企画部の女性社員がバックダンサー衣装で“キッズウォッチャー”を担当する。
その合間には、ウィルやラーラが巡回したり、午後4時からのミート&グリートで記念撮影をしたり。平日は企画部やマジアク課の若手男性が着ぐるみ担当を回していた。
なんとか回せそう。そう、思っていた。
まさかこの数日後、パレス内で『あの事件』として語り継がれる、超ド級の幕開けだったなんて……。
そしてその現場に、あの鬼島チーフもいて。
今でも思い出すだけで心臓が跳ねる。怖さと一緒に、あの低い声が耳の奥に残っているから。