俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

6

「私と……藤堂と、で、プレゼンですか?」

言葉を繰り返すと、声が少しだけ上ずった。

部長は資料から顔を上げ、当然のように頷いた。

「来週の木曜。地方のクライアントな。
新製品の共同提案だから、営業と企画で連携を組む。
営業は……まあ、言わずもがな、藤堂くんで決まりだ」

(なんで、今……)

心の中で声にならない叫びがこだまする。

「月岡、頼んだぞ。君の企画が核になる。
相手企業も期待してるし、藤堂くんとしっかり詰めて、現地で決めてこい」

「……はい」

口ではそう返したものの、頭の中では別の声が鳴り響いていた。

(なんで、このタイミングなの……)

やっと、佐久間さんと前に進もうとしていたのに。

温泉旅行の話だって、まだちゃんと返事していないのに。

それなのに。

よりにもよって、藤堂と──出張。



自席に戻ると、パソコンの画面にメールの着信がひとつ。

From:藤堂 環
件名:出張の件
本文:今日の終業後、15分だけ時間くれ。会議室C。

簡潔すぎる文面に、ため息が漏れた。

仕事だ。
これは。

私は気持ちを押し殺して、メールを閉じた。

(……仕事だから、平気。関係ない)

でも。

心臓の奥が、静かにうずいていた。
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