俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする
送信したあと、スマホを伏せてベッドの上に置いた。

自分で送ったくせに、胸の奥がずっとざわざわしている。
もしかしたら、まだ来ないかもしれない──

その時、

──ノックもなく、襖が静かに開く。

「やっぱり菊の間だったな」

藤堂だった。

淡い色のシャツにジャケット、出張用のラフな装いが、逆に目に焼きついた。
目が合った瞬間、何かを押し込めるような微笑を浮かべて、彼は中へ足を踏み入れる。

「佐久間は?」

「…仕事。コワーキングスペースで」

「そうか」

そのまま藤堂は、まるで当然のように座卓の前に腰を下ろした。
私は何か言わなければと思うのに、言葉がうまく出てこない。

沈黙。

「……で、旅行中?」

その問いに、私は小さくうなずいた。
藤堂は薄く笑って、でもその目は全然笑っていなかった。

「いい部屋だな。露天風呂付きか」

「……奮発してくれたみたい」

「へぇ、奮発ね」

皮肉も何も混じってないのに、妙に刺さる言い方だった。
それが悔しくて、思わず視線を外す。

藤堂は、そんな私の様子を観察するように見ていた。

「お前、あいつのこと……好きなのか?」

不意打ちだった。
その低い声に、心が一瞬だけ跳ねた。

「……藤堂には関係ない」

「関係なくないだろ」

藤堂の声が、少しだけ低くなった。
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