俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

15

顔が近くて、息遣いまで聞こえてくる距離で、藤堂はじっと私を見ている。

その視線が、つらかった。

「……やめてって、言ったのに……」

視界がにじんで、気づいたら涙がぽろりと落ちていた。

藤堂の目が驚きに大きくなる。
「……え、ちょ、ちょっと待って。なんで泣くんだよ……?」

あの藤堂が、焦ってる。
いつもの余裕なんてどこにもない。
私の頬に触れようとした手を、思わず振り払った。

「なんでそんなに勝手なの!」

私の声は震えていた。
「3年間、なんにも連絡してこなかったくせに。急に現れて、距離詰めてきて……勝手に触って、勝手に好きみたいな顔して……!」

藤堂が、唇をきゅっと結ぶ。

「……藤堂、だいっきらい!」

涙が次から次へとこぼれて、私は目をそらした。

沈黙。
藤堂は、なにも言わなかった。
ただ、立ち尽くして、私を見ていた。

あんな顔の藤堂、初めて見た。
強気で、傲慢で、自信満々な男が、まるで子供みたいに戸惑って、なにもできずにいた。
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