お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました

第5章 皇帝の嫉妬

二十五の打擲が終わる頃――

景文の背には、深々と赤い線が走り、所々で皮膚が割れて血が滲んでいた。

「景文……!」

私は思わず駆け寄ろうとしたが、衛兵に押し止められる。

「妃よ。おいそれと身を任せたのが、運の尽きだな。」

皇帝のその言葉に、胸が裂けそうになる。

景文は、膝をついたまま、意識が朦朧としていた。

そのときだった。

ゆらりと身体が揺れ、肩にかかる長い黒髪が滑り落ちた。

――そこに、はっきりと見えたのは、首の後ろに咲く、一輪の花の刺青。

「……これはっ!」

皇帝の顔色が、一瞬にして変わった。

「その刺青……その場所……そなた、まさか……!」

声が震えている。

普段、どんな時でも冷静さを崩さなかったあの皇帝が、今――狼狽している。

皇帝が、今――狼狽している。

玉座にある威厳も、権威も、今この瞬間、景文の言葉に揺らいでいた。

「なぜおまえが……息子たちと同じ刺青をしている⁉」
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