お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました

第9章 初めての春

翌日、婚礼は盛大に執り行われた。

宮中の庭には色とりどりの花が咲き誇り、貴族や高官たちが華やかな衣装に身を包み、私たちの婚礼を見守っていた。

龍鳳が舞い上がる金屏風の前、景文は第四皇子としての正装を身に纏い、凛と立っていた。

「……あれが、新たに皇子と認められた景文様か。」

「もとは文部大臣でありながら、皇族の血を引くとはな。」

「やはりただ者ではなかったか。若くして出世したのも、納得だな。」

そんなひそひそ話が、祝宴の隙間から耳に届く。

「ふんっ。」景文は小さく鼻を鳴らした。

「文部大臣をやってた頃は、俺の長い髪を見て“公務にふさわしくない”って陰口叩いてた連中が、今さら手のひら返しとはな。」

私は思わず吹き出してしまった。

「もう。そういうの、声に出さないの。」

「出さずにはいられん。今日は俺の晴れ舞台だからな。」

景文がふっと私の方に微笑みかける。その横顔は少し照れているようにも見えた。
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