姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
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100mも歩かないうちに暑さに嫌気がさした私は、近所の古い図書館に避難した。
ちなみに家と高校の中間点くらいの場所に存在している。
家と学校は徒歩圏内。
つまり学校と図書館も近いから、うちの生徒もごく稀に利用する施設だ。
昼過ぎの外は、カンカン照りの太陽に照らされてウザいほど眩しい。
それに比べてここは天国、エアコンがばっちり効いていてひんやり快適だ。
窓際に並ぶ長テーブルの、1番窓から遠い席にどっかりと腰掛ける。
(なーにやってんだろ、私。)
勢いで家を出たはいいけど、ここではたっと冷静になる。
無鉄砲に飛び出したって、つまらない夏休みは変わらないのに。
「――あれ?」
自分の思考に立ち止まる。
そもそもなぜ“つまらない”と思ったのか。
予定のない夏休みなんて、毎年のことなのに。
ぼやっと旧校舎での日常が頭の中に思い浮かぶ。
4人で過ごす、うるさくて他愛のないいつもの光景だ。
(……うるさいのがいないから、ちょっと物足りなくなってるだけか。)
夏休みが明けたらまた広瀬真でも弄り倒そう。
そう思ってぼんやりと本棚に挟まれた正面の通路を見ると、その本棚から本を取り出す人が目に留まった。
「お・う・み・りょうすけぇえええ!」
一文字言うごとに見つけた奴の側に近づく。
気持ちは大声だが、ここは図書館なのでもちろん小声だ。
下の名前を言い始めたあたりで近江涼介は私の声に気付いてこちらを向く。
そしてわずかばかりギョッとすると、私が近づくスピードの2倍の速さで後退りしていった。