姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.28 ちょっとだけ
「ちょっと!今の私めちゃくちゃ素だったでしょ!
なんで逃げるのよ!」
たまらず足音を立てないように走って距離を詰めると、ガッチリと近江涼介の腕を捕まえて本棚に追いやり詰め寄った。
「いや、なんか……捕って食われそうだな、と。」
久しぶりの友達との再会に狂気の如く爛々と輝く私の目をじっと見て、煩わしそうに眉を顰める。
「失礼な!アンタなんか捕って食べないわよ。不味そうだし。
それより、なんでここに――……」
ガタッと私が来た方向から物音がした。
見れば、高校生くらいの見た目の女2人が私達を見ている。
息が触れ合うほどの距離感の私達が奴らにはどう映っているのだろう。
「えー……」とか、「なにあれ」とか、小声で囁き合いながら犯罪者でも見ているかのような嫌悪感丸出しの顔をしている。
(何か言いたいならハッキリ言えよ。)
陰口に私たち2人の名前も出てきたから、多分同じ高校の生徒なんだろう。
大方私が近江涼介に迫っているとでも勘違いしたんでしょ?
それで?アンタらに関係ある?って感じだけど。
「……何?」
お腹にドスンと落ちた不快感をそのまま声色に乗せて凄む。
迫力にビビったのか、女共は気まずそうにどこかへ行ってしまった。
――嫌な感情が消えない。
女共が今までいた場所を睨みつけていると、真上から淡白な声が降ってきた。