姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.38 いざ、潜入!
「なな、何アレ!」
裏口の側まで行くと、裏口の扉を通せんぼするように扉に手をついてぼうっと立つ黒い人影のような物体を見つけた。
なぜかその真ん中あたりがチカチカ光っていて、今度こそ見てはいけないものを見てしまったかもしれない。
「真。」
狼狽えている私を相変わらず無視して近江涼介が物体に近づいていく。
物体はゆらりとこちらを向いて、ビクンと揺れた。
「ギャッ!!……って、なんだ涼介……と姫かよ。」
スマホのライトをこちらに向けて光らせ、浮かび上がる広瀬真の顔は青ざめていた。
チカチカ光っていた正体は、スマホのライトだったらしい。
「アンタこんなとこで何やってんのよ!」
「それはお前らもだろ!
俺は用事があって来たのに、もう正面が閉まってたから仕方なく裏に回って来ただけだ!」
「そんなの私達もですぅー。いいから早く入りなさいよ。」
「おお俺はいいからお前が入れよ!
レディファーストだ、譲ってやる。」
「あーら、こういう時は男が盾となり3歩前を行くべきなのよ!
アンタんちの家訓でしょ、覚えときなさいよ!」
「俺の家の話すんじゃねぇよ!いいから行け、早く行け。」
裏口のドアの前で「お前が」「アンタが」という不毛な論争を繰り広げるのを、近江涼介は退屈そうに静観している。
「……先行ってる。」
3分くらい経ったところで埒があかないと悟ったのか、呆れ顔の近江涼介が臆することなく裏口のドアを開けて校舎へと入っていった。
「ちょっと近江涼介、待って!置いてかないで!」
ドアが閉まる音で近江涼介がいないことに気づいた私と広瀬真も、急いでその後を追ったのだった。