姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
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「明日提出のワーク忘れたぁ?
お化け話にビビってるからそうなるのよ、バーカバカバカ!」
「うるっせぇ、お前だってスマホ忘れてんじゃねーかブース!」
「歩きづら。」
近江涼介の片腕ずつに私と広瀬真がそれぞれしがみついてぴったり体をくっつけていることを、大層煩わしそうにしていた。
私達は不法侵入しているから電気をつけることはできない。
真っ暗な校舎を広瀬真のスマホの光だけを頼りに歩いている。
――ちなみに広瀬真がここに来た理由は課題のワークの忘れ物をしたから。
近江涼介は図書館帰りに偶然私が学校に入っていくのを見かけたから、らしい。
「私は忘れたんじゃありませんー。幽霊が盗んだんですぅー。」
「はぁ〜?俺だって忘れてないわ!幽霊が盗ったに決まって………」
近江涼介の幅分の割と近い距離感で広瀬真と顔を突き合わせてやりあう中、ふっと同時に前方を見てしまった。
スマホの光のおかげでなんとか見える目の前は、薄暗いのと施設の古さが絶妙にマッチして不気味に映る。
そしてその先のスマホの光なんて届かない闇は延々と続いているように見えて、私たちのネガティブな想像を掻き立てた。
「ややややっぱなし!私忘れた!
私としたことがそこらにスマホを放り投げて忘れてしまいましたー!」
「おお俺だって幽霊なんか信じてないわ!
そういえば鞄に入れ忘れた気がする!!」
2人同時に後ろ手で拘束するかのように、力強く近江涼介の腕にしがみついたままその背後に回る。
「その割にはなんか目、泳いでない?
これだからビビリは困るわー!」
「お前だってなんだそのへっぴり腰!
いつもの威勢はどうした、だっせーなぁ!」
ギャーギャーと騒ぎながら近江涼介を盾のように前に押し出して数メートル進んだところで、ゆらりと近江涼介がこちらに振り返った。
「お前らいい加減ウザい。離れろ。」
その時の睨みつける顔が般若の如し。
そこらの幽霊より断然怖かったので私と広瀬真は静かに手を離したのだった。