姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
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いつもの教室のテーブルに並んで座る私と広瀬真は、刑事の様な顔で犯人に向かって凄んでいる。
向かい合って座る殺人犯こと榛名聖目掛けてスマホのライトを目掛けて当てる様は、さながら取り調べ中と言ったところか。
犯人には刑事の気迫が伝わっていないのか、満面の笑みで余裕に頬杖までついている。
「いやぁ、おっもしろかったなぁ〜。
『イタコか!?』『近江涼介が呪い殺される!』ってさぁ。」
「うるさい!」
「うるせぇ!」
私たちのセリフのリプレイはものすごくバカにする方向で誇張された口調だったので腹が立つ。
ちなみに今、照明は煌々とついている。
どうやらこれは最初から仕組まれていたことで、どうやってか知らないが旧校舎の使用許可も取ってあったらしい。
だから本来正面口と同じく施錠されているはずの裏口も鍵が開いていたし、叫んでも喚いても警備員の1人も飛んでこなかったというわけだ。
忘れ物に関しても、テーブルに置いてあったのを榛名聖が隙を見て回収してたらしい。
しかも、ちゃんと私たちが忘れたら確実に取りにやってくるであろうものを狙って。
最早犯罪のプロである。
――そして、お気づきだろうか。
普段閉まっている裏口をいつも開いているかのように誘導した人物がいることを。
そう、つまり近江涼介も共犯者ということ…!
疲れているのか2、3人座れるソファの席をゆったり占領して足を伸ばしている近江涼介を睨みつける。
得意の心読みで何を言いたいのか悟ったらしい共犯者は、こちらもなんの反省の色もなく淡々と話し始めた。
「俺は聖に時間と場所指定で呼び出されただけ。
なぜかお前らを呼び出されたことはバラさず裏口から通せって指示はあったけど。」
「その時点でなんかおかしいと思いなさいよこの裏切り者ー!」
スマホの角度を変えて近江涼介の顔面目掛けてライトの光を喰らわすと、うざったそうに眉を顰ませ目を細める。
広瀬真もそうだそうだと応戦した。
「涼ちゃんも羽交い締めでもみくちゃにされてて傑作だったよねぇ。
――ね、ひーちゃん。楽しかったでしょ?」
榛名聖の余裕綽々の緩い笑みは意地悪くも見えて。
その表情に滲む感情は、明らかな愉悦だ。
――そして、私は叫ぶだけ。
「楽しいわけあるかーーー!!」