姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.44 楽しい?
残る手札は広瀬真が1枚、榛名聖が2枚、私も2枚で近江涼介が3枚だ。
「どうなることがと思ったが、勝ちはもらった!
………くそっ合わねー!」
自分の髪をかき乱して悔しがる広瀬真に、榛名聖は「残念でした~⭐︎」と煽るに手を振った。
「ひーちゃんは、ババ持ってるのかなぁ?」
続いて私の方へと向き、反応を伺いながらも迷いなく一枚引く。
――ただ、揃わなかったようだ。
私の手札は残り1枚。ここが私の勝負どころ。
広瀬真はババを持っていない。(この佳境で持ってたら絶対態度でバレる。)
榛名聖は……わからない。
私にしたババ所持の確認はフェイクで、自分が持っているのを隠したかっただけなのかも。
だからつまり、残るは近江涼介――……!
奴の心を読むしかない。
じっと睨みつけるように、穴が開くほど見つめてみる。
……うん、なるほどわからない。
今隕石が落ちてきたとしても表情変わらないんじゃ、と思うくらいにはいつも通りの無表情だ。
「近江涼介。」
「…何。」
「私は“2”が欲しい。」
「で?」
ピクリとも動かない表情。
切れ長でまつ毛に覆われたその目はよく見ると澄んでいて、ずっと見ていると吸い込まれそうになる。
――そんな作り物のロボットみたいな奴だから、時々本音が気になってしまう。
「近江涼介。」
「何。」
「今、楽しい?」
伏していた目がほんの少し大きくなる。
(あ、人間だ。)
表情の変化に感情の揺らぎを見つけて、なぜだかちょっとホッとする。
それと同時に、本能的に“これ以上踏み込んではいけない”と心でブレーキがかかる音がした。
「――隙ありっ!」
すかさず真ん中の1枚を抜き取って、自分の手札と見比べる。
揃った数字ににやりと不敵に笑った。