姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.59 変わったよね
榛名聖の話は本当だった。
翌日からクラスメイトまでもが私達に話しかけてくるようになったのだ。
「藤澤さん、今週末とか遊べたりしないかなー、なんて!」
「ごめんね?週末はピアノにバレエに生花のレッスン(嘘)があるから忙しいの。また誘ってね♡」
――なんて会話を今日だけで何度したことか。
笑顔を作り過ぎてだんだん頬も引き攣ってくる。
「やーっと落ち着いたか。」
男の撤退と入れ替わりで、広瀬真が後ろを向いて私の机に片肘をついた。
女共の嵐が去って清々しているようで、呑気に大欠伸している。
さっきまで「無理」「行かない」「空いてない」と、ものすごく険しい顔で拒否の言葉ばかり並べていたのがまるで別人かのようだ。
「お前はいつまでアレやるわけ?あの、気持ち悪ぃやつ。」
「気持ち悪い?
――あぁ、これかな?この超可愛いぶりっこ♡」
軽く握った両拳を口元に当て、小首を傾げて笑って見せる。
広瀬真は口角を引き攣らせていたけど、その向こうで偶然こっちを見ていた何人かのジャガイモのハートが撃ち抜かれる。
(うんうん、これが正しい反応ね。)
自分の背面で私の可愛さにデレデレと赤面している奴らに気づくと、広瀬真は不機嫌そうに顔を顰めた。
「“復讐”が目的ならやる必要ねーだろ。
……俺達がいるんだし。」
一瞬の沈黙。
次いでハッとした様に細くなっていた広瀬真の目が大きく見開いて、驚いているのが伝わってきた。
「ちちち、違うからな!?別に他意はねぇ!」
ボン、と爆発するように赤くなる顔。
だらけてた背筋はしゃんとして、なぜか目が泳いでいる。