姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「ちょっと待った!」
榛名聖が紙芝居を一枚捲ったところで一時停止を申し入れる。
幼稚園児の絵の様な黒髪のアホ面へろへろ人間がバーンと描かれた紙面を思いっ切り叩き落とした。
「このブッサイク、もしかして私!?認められないから!」
平然とにこにこしている榛名聖に額が付く勢いで迫る。
「お前なんかこんなもんだろ。話逸れるから黙っとけ!」
瞬間、広瀬真に頭を押さえつけられた。殺。
「聖、続き。」
机面に額を擦り付けてジタバタしている私に目もくれず、近江涼介は冷静に場の空気を巻き戻す。
榛名聖もそれに応じて頷いた。
「さっきも話した通り、今までみんなで牽制し合ってたのに、あろうことか掟破りのひーちゃんが俺達に受け入れられちゃった。
だったらルール守る必要ないよねって層が、新年度の騒ぎに便乗してるみたい。」
落とされた紙芝居をそのままに、榛名聖は「チャンチャン⭐︎」と話を締める。
近江涼介は納得した様に息を吐いた。
「――最近ではどうやら今年の文化祭のコンテストの賞品に俺達が使われるって噂まで出回ってるし。
もうしばらくは騒がしいままかもねぇ。」
「落ち着くまで無視するしかないな。」
両手を合わせて取っ組み合い続けてる私と広瀬真を他所に、2人は“やれやれ”とお茶を啜り出す。
しかし待って欲しい。まだ解明されていない大切なことがある。
「アンタ達のはわかったけど、私は!?私もこんな目に遭ったの初めてなんですけど!」
広瀬真に押し負けないようにしながら、のほほんとしている近江涼介と榛名聖の方を見る。
すると2人は静かに目を見合わせ、すぐにふっと明後日の方を見た。
「ひーちゃんのは……日頃の行い、かなぁ?」
「手当たり次第男を誑かしてきた代償。」
雑すぎるあしらい。目の前の広瀬真も馬鹿にしたように笑う。
「お前なんか本性表せばすぐ収まるんじゃねぇの?」
「何そのテキトーさ!許せない!」
この前は助けてくれたのに!
急に仲間外れにされたようで、私は地団駄踏んで怒った。