姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
川島美玖と名乗った女は、前髪パッツンのボブヘアーが特徴的。
私ほどではないがくりくりと大きな目と顔に合ったカラッと明るい笑顔がしっくりくるタイプの女だ。
小林円は見るからに大人しそうなタイプの女。
テンプレートな膝下長さのスカートに黒髪ロングメガネ。ついでにちょっとおどおどしている。地味メガネ。
坂井玲奈はメイクもバッチリだし、スカートも短いし、態度も相まってギャルっぽい。
派手に染めた茶髪パーマの長い髪を、指でくるくると弄っている。
あだ名をつけるならユルケバウェーブってとこだろうか。
「前からさぁ、可愛いと思ってたんだよね!藤澤さんのこと!
いやぁ、でもいきなり話しかけたらキモイかなって思ってなかなか勇気が出なくて!」
固まっている間に、川島美玖にギュンと距離を縮められて両手を握りしめられた。
……けど思いっきり振り解いてしまった。なんか、反射で。
「……あぁ〜!ごめんね!私って昔から距離の詰め方おかしいって言われてて!
でも藤澤さんのこと可愛いって思っているのは本当なの!あっ、姫ちゃんって呼んでもいい!?」
ヒメチャン!?!?!?
雷に打たれた様な衝撃に、私はただ頷くことしかできなかった。
***
「女友達ができたァ!?」
衝撃のニュースに、昼休みの旧校舎にも激震が走った。
「チガウ、トモダチじゃない。トモダチなろッテ言われたダケ。
アトアソビに誘わレタ。」
未だ放心状態でプスプスと頭から煙が出ている状態の私を見て、広瀬真は不審そうに口元を引き攣らせる。
「なんでコイツはさっきからカタコトなんだ?」
「前代未聞の出来事に対応できないでいるんじゃないかなぁ?
あ、ひーちゃんお茶飲む?お菓子もあるよ〜。」
「飲ム……。」
「本当に残念なヤツ……。」
呆れた様にため息をつき、広瀬真は紅茶を啜る。
榛名聖は変わり果てた私の姿を面白がる様に、紅茶を飲ませたりお菓子を食べさせたり、甲斐甲斐しく世話をしている。
「で?遊びに行くわけ?」
今までずっと黙ってたせいで新鮮に聞こえる近江涼介の低音ボイスに、ちょっと脳波が正常に戻る。
榛名聖によって詰め込まれたフィナンシェを高速咀嚼して飲み込んだ。
近江涼介の全てを見透かすかのような強くてキレのある眼差しに、私は苦々しく口元をまごつかせた。
「………、頷いてしまった、から、行ってくる。」
フリーズしていたせいで遊びに誘われた時、機械的に頷いてしまったことを思い起こす。
不覚を取った悔しさで勢いよくテーブルに突っ伏した。