姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.62 キラキラな世界
やっと米粒大になっていた2人に追いついた後の展開は、衝撃の連続だった。
初めてではない景色のはずなのに、初めて見る世界の様で目を白黒させてしまう。
流行りのスイーツをみんなで食べて、ファションビルでお洋服を見てコスメやアクセを見て。
「これ似合いそう〜♡」
なんて言い合いながらキャッキャウフフと練り歩く。
(こ、これが、JKの日常……!)
いつぞやH2Oと遊びに行った日のことを思い出して、キラキラ具合の落差にただただ驚いている。
「あー、ねぇコレ可愛い!みんなでお揃いしようよ〜!」
雑貨屋のディスプレイの前で前髪パッツンが足を止めた。
彼女が嬉しそうに手にしたのは、ギョロ目毛玉の変なマスコット。
(何これ。本当に可愛いの?)
「あー、私は……」
「いいね!そうしよ!」
断ろうとしたのをユルケバの声が遮った。
地味メガネも一生懸命頷いて賛成している。
「姫ちゃんはやっぱりピンクの子だよね!」
“お揃いで買うのが当然”――そんな疑いのない明るい表情。
……何これ、笑えない。
「私はいいかな?3人でお揃いにして。」
申し訳なさそうに見える微笑みで、持たされたマスコットを返す。
一瞬、3人の笑顔が止まった。
それから無言で、彼女はマスコットを棚へ戻した。
「あ――。姫ちゃんが買わないならいいや。」
女達は投げる様に不細工なマスコットをディスプレイに捨てていく。
(“お揃い”ってそんなに特別?)
嫌に心が張り詰めて、全身に力が入る。
「姫ちゃん!早く早く〜っ!」
「――うん、今行くね。」
慣れた様に唇に弧を描かせる。
心がざらつく程、作り笑顔は上手になっていった。