姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.63 本当に大切なもの
単調で温くてハッキリしない会話を繰り返しながら、私達はプリクラの機会が立ち並ぶスペースへと辿り着く。
「ね!プリクラ撮ろっ!
これならいいでしょ?姫ちゃん。」
前髪パッツンはするりと私の腕に自分の腕を回す。
背筋がゾワっと逆立って、さりげなくその手を振り解いた。
派手なモデルが映る幕がかかったプリクラ機。
見覚えがある。
アイツらとの騒がしい会話が蘇って、思わずポロリと呟いた。
「アイツらとも、撮ったな……。」
3人の目の色が変わる。
私にその視線が一斉に集まった。
「榛名くん達とも遊んだりするの?」
ユルケバが待ってましたとばかりに急に距離を詰めてきた。
「近江くんとプリクラ撮ったの?
えー……、見たい見たいっ」
無邪気に笑う前髪パッツンの目に、興奮と嫉妬が爛々と映っている。
……気持ち悪い。
さっきまでキラキラして見えてた世界が、一瞬で嘘くさく見えてきた。
2人の目は大きく見開いて、それなのに口元は私が警戒して逃げない様に不自然に笑っている。
――笑顔の裏に隠している感情が、いつも私を傷つけるって知っている。
(……私を足がかりにして、アイツらに近づこうって魂胆だったか。)
“欲しかったものかも”
……なんて、騙されちゃって情けない。
あー……なんだか今、無性に奴らに会いたい。
「用事思い出した!帰る。」
笑ってやるのももうおしまい。
前髪パッツンが「待って」とかなんかごちゃごちゃ言っているのを全部無視して、背を向けさっさと歩き出す。
ごめんよ、小さい頃の私。
欲しかったものはここにはなかった。
……でも、もっと大事なものに気付いたの。