姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

***
それから2年後、僕達は12歳になっていた。

「真くん久しぶり。先月以来かな?」

真くんは見違えるように変わった。
厳しい父親の横で空気を読みつつ、必要に応じて大人の会話に混ざったり黙ったり。

堂々とした立ち姿はさすが広瀬家のご長男とおじさん達に褒めそやされる程だった。

同い年にしてはまだ小柄な方だけど、あの頃よりはずっと背が伸びた。

女の子みたいな顔立ちは相変わらずなものの、凛とした意志の強そうな目は男らしくも見る。

「広瀬家の真さんと榛名家の聖さんよ。 並んでいると絵になるわね。」

「どちらも家柄も容姿もいいなんて素敵。懇意にしている方はいるのかしら…。」

声のする方に目線を流せば、ほうっと惚けた吐息が聞こえ、令嬢達が目眩で足をもつれさせる。

「聖くんは相変わらずモテるね、大変そうだけど……。」

真くんが気まずそうに苦笑した。

「それは真くんもでしょ。 最近よく声をかけられるんじゃない?気になる人はいたりする?」

仲のいい友人“みたい”に揶揄いまじりに聞いてみる。 冗談の通じない真くんは、真面目に溜め息をついて答えた。

「僕は…多分家柄目当ての人ばかりだし。 僕に魅力があるわけではないし、興味はないかな。」


――それなのに、自己評価が低くて卑屈。
それは愛されていない証拠。


この頃の僕は真くんと会う度に、いかに彼が愛されずにいたかを確かめるようになっていた。


「そういえば、再来月に僕の家の別荘で母の生誕祝いのパーティーをするんだ。
僕のクラスメイトとその母親を招待しているんだけど、よかったら真くんもどうかな?」

「いいの!?ぜひ行くよ、あとで詳細を教えてくれる?楽しみだなぁ。」

初めて誘われたのだろう、今までになく真くんの顔が華やいで、楽しみにしているのが言わなくても伝わってきた。


――この誘いを、僕は後に後悔することになる。
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