姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.78 光差す


夕暮れ時の小さな公園にはもう誰もいなかった。
唯一の遊具であるブランコに、私と榛名聖はひとつずつ並んで座っている。

ブランコの微かな揺れで、伸びた影がゆらゆらと揺れていた。


「“普段からそーやってりゃいいのに、
ぶりっこしてっからブチ切れるんだよ、ブス”。」


寂しい夕空に、キッパリとした声が響いた。

「私が女共にブチギレた時広瀬真に言われたのよ。
ムカつくよねー、私が今までどんな思いで可愛い女の子を演じてたのか知らないくせに。

あ、今のは中身の話で、見た目は何もしなくても超絶可愛いんだけどね?」

「……ごめん、何の話?」

さすがに榛名聖のツッコミが入った。
そこでようやく目が合うと、私達は数秒間見つめ合う。


「ヘラヘラ本心隠してんじゃねーよって話!」


冷めていた榛名聖の瞳が揺れる。

それなのに、ブランコの鎖を握る手に力が入って、口角が引き攣るように持ち上がった。

「……自分が言われてムカついたって思ったのに、そんな気休めが俺に響くと思ったの?」

「全然?でもそうして欲しいって思ったから言った。」


――こんな強がりに負けてられない。
真っ黒な海の底に沈んでいく手を掴まなくちゃ。
< 235 / 874 >

この作品をシェア

pagetop