姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「9月になってもまだ暑いね〜…。溶けちゃうかも。」

「ね。帰ったらとりあえずアイス食べよ。」

俺なんて暑さにげんなりしているのに、同意したはずのひーちゃんは涼しい顔で背筋を伸ばして歩いている。
学校の人たちに隙を見せないクセのようなものだろう。

大きい瞳を囲う影を作るほどの長いまつ毛、強い日を浴びて透ける白い肌。

頬は暑さでやや紅潮していて、唇もリップをつけているのか艶やかに色付いている。

汗知らずの天然ウェーブの黒髪が、歩くたびにふわりふわりと揺れて真っ白なスカートと一緒に歩いていた道に余韻を残していく。

(ホント、黙ってればお人形さんみたいな美少女なのに。)

彼女は涼ちゃんを“ロボット”と表現しているけど、ひーちゃんも見た目だけは作り物に近い。
少し前まで男子たちの高嶺の花になっていたことも、実は納得しているのだ。

本人が調子に乗るから言わないけど。

なんて思いながら歩いていたら、あっという間にひーちゃん()があるマンションについた。

エントランスの鍵を開け、中に入っていくひーちゃんの後に続く。

ひーちゃんが郵便物を確認したあとエレベーターに乗り込むと、俺が「4」のボタンを押した。
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