姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「なんか飲みたきゃ自分で出せよ」

傑さんも俺がひーちゃんと一緒に帰ってくる状況に慣れたらしい。
特に噛みついてくることもなく、クッションが散らばるソファに戻った。

そして俺も、特に遠慮することも戸惑うこともなくダイニングテーブルのキッチンの入り口側、真ん中のいつも座る席に座る。

絵に描いたような普通の家の風景の一部みたいになっていることに、毎回足元がふわふわしたような気持ちになる。

ご両親が家にほとんどいないと言う点を除いてはごく普通のあったかい家庭に、入れてもらった気分で浮かれているんだろうなぁ。
感情に浸りきれず冷静に思うのはしょうがない自分の(さが)なんだと思う。

「部屋死ぬほど暑かったー。
榛名聖!アイス食べよ。ソーダ系とバニラ系、どっちがいい?」

部屋着姿でドタバタと戻ってきたひーちゃんが、そのままの勢いで冷凍庫を開けて水色と白のアイスバーを一本ずつ取り出して見せる。

「うーん、じゃあソーダかなぁ?」

「残念、被った!一本ずつしかないからこっちは私の。
バニラをあげます。」

「えっ、それ聞いた意味あったの〜?」

そう言って困ったように笑って見せつつ、バニラ味のアイスが入った方の袋を受け取る。

無邪気にソーダ味のアイスの袋を開けて、悪戯っぽく笑うひーちゃんはどこにでもいるごく普通の女の子。

場面ごとにくるくると印象を変える彼女は、見ていてとても面白い。
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