姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
胸にズドンと何かを投げつけられた様な衝撃が走る。
空間が歪んで、内蔵全部が締め付けられて生唾を飲み込んだ。
(怖い。――怖い!じゃあ、“あの子”は誰?)
「一度だけお腹に来てくれたことはあるんだけど、生まれる前に、ね。
あらやだ、もしかして姫ちゃんって霊感みたいなものがあったりするのかしら?この辺に誰か見えてる?」
自分の肩の辺りをくるくると手で指し示して笑う近江母に合わせて笑うのが限界になってきた。
何が霊感だ。
今のこの状況の方がよっぽど心霊現象だ。
説明できない気持ち悪さに全身怖気が走って、ずっと心臓がザワザワしている。
知らない少年が映る家族写真。
私の知る近江涼介ではない息子の話をする母親。
でも確かに表札は近江で、近江涼介は自分で鍵を開けて家に入って、中から近江涼介に似た女が出てきたのだから、ここは近江涼介の家で間違いはないはずなんだ。
「姫ちゃんにはご兄弟はいるの……」
「すみません!宿題やらなきゃなんで帰ります!」
――これ以上話をするのは無理だ。
立ち上がり強引に話を切り上げる。
ぽかんとしつつも見送り出ようとする近江母を制して、私は最後の力を振り絞って笑顔を作る。
「……ちょっと近江くんの様子だけ、見てきてもいいですか?」
会わなくちゃ。今。
真実を掴むために。