姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.106 助けてほしい


案内された2階の一室のドアをノックしてそっと中に入る。

(……ここも気持ち悪い。)

青基調のthe・男の子の子供部屋って感じの雰囲気の部屋は、高校生男子、ましてあの近江涼介のイメージからはかけ離れている。

本棚には傑兄ちゃんが小中学生の時くらいに読んでいたような少年漫画が並んでいて、下段の一角に申し訳程度に文庫本が置いてある。

サッカーボールとかも飾ってあるし。

勉強机には、ゲームに出てくるモンスターのシールが貼ってあったりそれを剥がした跡が残っていたりもしている。

近江涼介の部屋のはずなのに、近江涼介の痕跡を全く感じない。

「近江涼介。」

ベッドの上で深い青の夏布団にくるまっている塊に向かって、静かに声をかけるが応答がない。
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