姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.110 地雷


――その日は日曜日で、家族で街に出掛けて初めて俺がスカウトというものを受けた。

スカウトマンが「この子は将来光る」みたいなことを言って両親を執拗に説得する。

「この子は普通の子だ」

「周りの子と対して変わらない」

母親が物凄く嫌そうな顔で、必死に突っぱねていたのを覚えている。

しつこいスカウトマンを追い払うことはできたけど、“涼”ではあり得なかったことが起こったのが許せなかったのだろう。


――だからあの日の母親は気が立っていたんだと思う。

その日の夕飯はハンバーグだった。

「涼ちゃんの好きなハンバーグよ。
にんじんもちゃんと食べなくちゃダメだからね?」

出来立てのハンバーグ。その傍に小さく刻まれたにんじん。

“涼”の好物だから、今まで何度だって食卓に並んでいたし、その度に俺は何も言わずにニコニコしながら食べてきた。

それなのに――
どうしてか今日に限って余計なことを言ってしまった。
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