姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.112 まっさら
高校に入学してまず思ったのは、「どうしていいかわからない」だった。
ここに俺を知る人は1人もいなくて、“涼”でいる必要もない。
演技をしなくていいんだと思ったら、心が途端に無になった。
よそよそしい態度のクラスメイト達が、仲間を作ろうとあちこちで笑顔を作って誰かに話しかけている。
俺はその片隅で取り残されているけれど、別にそれをどう思うわけでもない。
1人静かに席に座って、ぼうっと時間を消費する。
教室のざわめきは遠くの波のようにぼやけて聞こえた。
誰もいない真っ白な部屋に1人で座っているような感覚だった。
音も色もないような世界に、最初に飛び込んできたのは聖だった。
「近江くん、だよねぇ?」
急に前の席に座って、俺の視界に割り込む聖はニコニコと柔和な笑みを浮かべている。
……嘘くさい。
第一印象はそんな感じだった。