姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「おはよう、近江くん♡」
愛嬌のある笑顔、猫撫で声。姫がどう、とかではなく作り物感満載のこの態度は苦手だ。
“100点満点の笑顔”と顔に書かれていそうな姫の笑みは、俺の近くまで来て他に見えないよう壁側を向くと一瞬で消えて睨め付ける形相に変わった。
「ちょーっと聞いてよ、榛名聖が私のこと絵心もセンスもないってバカにしてきてさァ……!」
顔も声も不機嫌丸出し。
引き攣る口も、半分ほどの大きさになって吊り上がった目も、強く握ったテーブルに置いた手も、人間の感情を最大限に発揮しているようで面白い。
こうなった原因はしょうもないことなんだろうけど。
「いやこれはないって言いたくなるでしょ〜。ねー?涼ちゃん。」
鬼気迫る姫の背後に聖と真がやってくる。
言いながら聖はひらりと一枚の紙を見せてきた。
「……何だこれ。」
思わず口をついて出た、それほど不可解な絵だった。
歪に凸凹した図形の中が真っ黒に塗られていて、その中心には恐らく三角形の何かがピンク、黄緑、水色の3色展開で並んでいる。三角形の中はびっしり小さな丸が埋め尽くしていて、じっと見ていると気持ち悪くなってくる。
「これねぇ、クラスTシャツのデザイン案。ひーちゃんが描いたんだけどぉ…あっこれおにぎりなんだって。」
聖が謎の三角を指さして言った。
なるほど、言われれば……いや、わからない。
ということはこの黒い不思議な図形はTシャツの形か。
袖が左右非対称にくっついているし、首元と思われる部分はなぜか凹まず膨らんでいるからわからなかった。
これは、センス云々以前に、
「絵心ないな。」
「ひどい!近江涼介まで!」
姫が教室だからか地団駄踏む代わりに思いっきり頬を膨らまして俺の肩口を掴んできた。
かわいこぶった仕草に反して握る力が強すぎて解放される頃には皺になっていそうだ。
「大体クラスTシャツ⭐︎なんて薄寒いものの考案に参加する気なんかないのよ!なのに榛名聖が試しに描いてみろとかいうからぁあ〜!」
今度はシャツをグイグイ引っ張っる。
その隣で、真が顎に手を置き神妙な顔で口を開いた。
「俺は悪くないと思ったんだけどな。」
「センスない奴に同調されても嬉しくない。」
姫がもう一枚恐らくデザイン画と思われる紙を掲げる。
“思われる”と表現したのはそれに書かれているのが幼稚園児の落書きのようなものだったからだ。
デザインしたTシャツを着た人間を描いたのだろうが、顔も体も見ていて不安になる歪さだった。
紙の端には一丁前に「Makoto.」と筆記体でサインがしてある。
「ぁんだと!?」
「なによ!?」
途端に睨み合う姫と真。そこから「ブス」だの「バカ」だのといつもの喧嘩が始まった。
それを蚊帳の外で茶々を入れながら楽しそうに観戦する聖。
騒がしいいつもの光景。
でもこれは嫌いじゃない。
愛嬌のある笑顔、猫撫で声。姫がどう、とかではなく作り物感満載のこの態度は苦手だ。
“100点満点の笑顔”と顔に書かれていそうな姫の笑みは、俺の近くまで来て他に見えないよう壁側を向くと一瞬で消えて睨め付ける形相に変わった。
「ちょーっと聞いてよ、榛名聖が私のこと絵心もセンスもないってバカにしてきてさァ……!」
顔も声も不機嫌丸出し。
引き攣る口も、半分ほどの大きさになって吊り上がった目も、強く握ったテーブルに置いた手も、人間の感情を最大限に発揮しているようで面白い。
こうなった原因はしょうもないことなんだろうけど。
「いやこれはないって言いたくなるでしょ〜。ねー?涼ちゃん。」
鬼気迫る姫の背後に聖と真がやってくる。
言いながら聖はひらりと一枚の紙を見せてきた。
「……何だこれ。」
思わず口をついて出た、それほど不可解な絵だった。
歪に凸凹した図形の中が真っ黒に塗られていて、その中心には恐らく三角形の何かがピンク、黄緑、水色の3色展開で並んでいる。三角形の中はびっしり小さな丸が埋め尽くしていて、じっと見ていると気持ち悪くなってくる。
「これねぇ、クラスTシャツのデザイン案。ひーちゃんが描いたんだけどぉ…あっこれおにぎりなんだって。」
聖が謎の三角を指さして言った。
なるほど、言われれば……いや、わからない。
ということはこの黒い不思議な図形はTシャツの形か。
袖が左右非対称にくっついているし、首元と思われる部分はなぜか凹まず膨らんでいるからわからなかった。
これは、センス云々以前に、
「絵心ないな。」
「ひどい!近江涼介まで!」
姫が教室だからか地団駄踏む代わりに思いっきり頬を膨らまして俺の肩口を掴んできた。
かわいこぶった仕草に反して握る力が強すぎて解放される頃には皺になっていそうだ。
「大体クラスTシャツ⭐︎なんて薄寒いものの考案に参加する気なんかないのよ!なのに榛名聖が試しに描いてみろとかいうからぁあ〜!」
今度はシャツをグイグイ引っ張っる。
その隣で、真が顎に手を置き神妙な顔で口を開いた。
「俺は悪くないと思ったんだけどな。」
「センスない奴に同調されても嬉しくない。」
姫がもう一枚恐らくデザイン画と思われる紙を掲げる。
“思われる”と表現したのはそれに書かれているのが幼稚園児の落書きのようなものだったからだ。
デザインしたTシャツを着た人間を描いたのだろうが、顔も体も見ていて不安になる歪さだった。
紙の端には一丁前に「Makoto.」と筆記体でサインがしてある。
「ぁんだと!?」
「なによ!?」
途端に睨み合う姫と真。そこから「ブス」だの「バカ」だのといつもの喧嘩が始まった。
それを蚊帳の外で茶々を入れながら楽しそうに観戦する聖。
騒がしいいつもの光景。
でもこれは嫌いじゃない。