姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―


「――ちょっといいですか?」

キーンという機械音と、美少女の見た目にそぐわぬ男の声に会場全体が広瀬真に注目する。

予定外の行動に私も内心動揺しつつ広瀬真を見つめた。


「この“特典”って、逆でもいーっすよね?」


“逆とは?”

私も含めて満場一致でハテナを浮かべる間に、ほんの少し身を屈めた広瀬真の顔が近づいてくる。

視界が広瀬真でいっぱいになった。
広瀬真の長い睫毛が、こめかみをくすぐった。

それに反応できずにいる内に、右頬に何か柔らかいものが一瞬触れて、離れていった。

「どーもありがとうございました。」

淡々と広瀬真が言った直後、ギャァアと驚きと悲壮の叫びに沸く会場。


榛名聖は「わーぉ⭐︎」と目を丸くしつつも楽しそう。

近江涼介は異空間にいんのかってくらいには、動じず無表情。

広瀬真は「フン」と鼻を鳴らして私から顔を逸らしている。


――そして私は問題の右頬に触れ、ぽかんと突っ立ったまま。


(今触れたの?唇?……キスされた?)


アナウンス部の思惑通りかは知らないが、大騒ぎの大盛り上がりでコンテストは幕を閉じる。

波乱や変化が起こるのかもわからないが、小さな波紋を残して初めての文化祭が終わっていった。
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