姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
特に母親の存在は大きかったと思う。
息子である俺への愛情を惜しみなく表してくれる人。
「真さん、今日もよく頑張りましたね。」
そう言って小さな俺の頭を撫でる、柔らかな手つきが大好きだった。
母親が嬉しそうだと俺も嬉しい。
だから母親が笑うと俺も笑った。
そんな母親の愛情は厳しさと優しさを両立させたものだった。
もともとは広瀬に並ぶ家柄の三女で、「広瀬に尽くせ」と言われて嫁いできたらしい。
そして言われた通り広瀬の家に、父に誠心誠意尽くしていた。
そんな厳しいながらも表情豊かな母親は、父親の前だと凜として笑わない人になる。
“好き同士だから結婚したのにどうして?”
子どもの浅い知識で結婚とはそういうものだと思っていたから、その逆とも言える母の態度があの頃の俺には不思議で仕方がなかった。