姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.15 ブラックホール
あー、うるさい。うるさい。
美しくカットされた野菜の入ったカゴを抱え火起こし場へ向かう私は、いつまでもわいわいとついてくる男共に内心うんざりしていた。
まぁ、わかるけどね?こんな美少女が料理までできるなんて反則だよね?
おまけに私のエプロン&ポニーテール姿なんて貴重だもんね?
面白くなさそうな女子の視線は多少心地いいけど、群がっているのがモブばっかりで大して勝った気にはなれない。
――何か面白いことないかしら。
「!?」
1番角の調理場に人ごみができている…!?
しかも周りにいるやつらみんな吸い込まれるように群がって…何あれ、ブラックホール!?
榛名聖と金髪はさっき見かけた。
他にこんなことできる奴は1人しかいない。
「これ、お願いしていいかなぁ?」
近くにいたモブに返事も聞く前に、野菜の入ったカゴを押し付ける。
そしてすぐにブラックホールに吸い込まれるように人集りの中心を目指した。
「きゃー!近江くんって料理上手いんだね♡」
「近江くんのカレー、私も食べたぁい♡」
耳元で鳴く蚊よろしく黄色い声できゃんきゃん騒ぐ取り巻き共。
それをまるで存在しないかのように無視して一切反応しないブラックホールの中心は、ただ黙々とじゃがいもの皮を剥いている。
「へぇー、近江くん料理できるんだ♡」
私ほどではないけれど、綺麗に剥かれてかごに収まるじゃがいもの山を覗き込む。
私の声に気づいて、動かざること山の如しだった近江涼介は初めてじゃがいも以外のもの、もとい私を見た。