姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.175 変遷
お詣りも済ませて、本堂前のスペースで配布されていた甘酒を飲んでいる。
古くて小さい神社なのに参拝の行列は途切れず、その周りではお守りを買う人がいたり同じく甘酒を楽しんでいる人がいたりと賑わっている。
「この後はどうしましょうか?姫ちゃんさえよかったら、お昼もご一緒しませんか?」
「いいの?うん、そうしたい。」
言った直後、人混みの中で頭ひとつ抜けている背の高い黒髪の後ろ姿を見つけた。
遠目でもわかるツヤツヤサラサラストレート。
バグってる頭身。
見間違えるわけがない。
「近江涼介!!」
急に大声を出して走り出した私に、天音ちゃんは面食らって初動がもたつく。
名前を呼ばれたその男は、無機質な視線を私の方へと向けてその姿を認識すると少し驚いた様な顔をした。
「なーにしてるのよ、こんなところで!
所用は?どうしたの?」
「……これが所用。
お前こそ近所の神社はどうしたわけ?」
悪びれた様子もなくサラッと躱わされて反論に詰まる。
近江涼介の涼しい顔に相反して、こっちは不服を全力で顔で表している。
「私は天音ちゃんと……」
「姫ちゃん、どうしたんですか……あっ。」
人混みを縫ってやっと追いついた天音ちゃんが、近江涼介の姿を見て驚いた後表情を曇らせた。
「……どうも。」
近江涼介達のことを“私の友達”と説明したから、一応挨拶はしてくれたのだろう。
視線すら合わせず言葉すら交わしたくない、という雰囲気がありありと出ているけれど。