姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
「どーも。」
近江涼介も近江涼介で私に配慮したのか、一応の挨拶を返す。
かと言ってそこから何か会話が生まれるでもなく、重たい空気が漂う中で沈黙が続いている。
(く、空気重……!)
“友達が別の友達連れてきたら内心気まずい”と言う渉兄ちゃんからの教えを今目の当たりにして痛感する。
近江涼介が気まずさを感じているかは微妙だが、少なくとも天音ちゃんは不快そうにしている。
私の誘いを断ったくせに呑気にこんなところにいる近江涼介を見つけて、勢いで突撃しちゃったけど……
ちょっと失敗した気がする。
「なんか悩んでる?」
「えっ?」
コツンと緩く握った拳の甲で、近江涼介に額を軽く叩かれた。
悩んでると言うか、気まずくなってただけだけど……
「貴方達のせいで」なんて言えず近江涼介の顔を見れば、近江涼介もじっと私の目を見つめている。
そして、全てを見透かすその目と視線がぶつかって気付く。
あ。違う。
母親のことでずっと引っかかってモヤモヤしてることを言ってるんだ。
(なんかちょっと、悔しいなぁ。)
全てお見通しなことをそういう風に思うのに、それが嬉しくもあって。
俯いてこっそり口を緩ませると、顔を上げて強気で不服を訴える態度を取り戻す。
「別に何も悩んでないし!
私これから天音ちゃんとランチなの!じゃあね、所用がある近江くん?」
パシッと額に置かれたままの手を振り払って、勝ち誇った様に鼻を鳴らす。
私の言動に近江涼介は珍しくキョトンとした顔を見せた後、可笑しそうにフッと笑った。
「ならいいけど。
じゃあな。栗谷、邪魔して悪かった。」
「え。」
私と近江涼介のやりとりを黙って見ていた天音ちゃんが、急に近江涼介に謝られて固まる。
「休み明け覚えておきなさいよー!」
天音ちゃんが面食らってる間に颯爽と去っていく背中に向かって捨て台詞をぶつけると、天音ちゃんの方に向き直った。